宿泊施設のサステナビリティ取り組み状況と課題
旅行や出張で利用する宿泊施設でも、「サステナビリティ(持続可能性)」が重要なテーマとなっています。環境に優しい取り組みや地域社会への貢献を目指す宿泊施設が増えており、その努力が注目されています。特に、円安によるインバウンド(訪日外国人観光客)の増加が宿泊業界に大きな影響を与えています。
日本の取り組みと課題
取り組み状況
1.使い捨てプラスチックの削減:
多くの日本の宿泊施設が、使い捨てプラスチック製品の使用を減らす努力をしています。ホテルチェーンの一部では、プラスチック製の歯ブラシやコップを木製や紙製のものに変更しています。また、使い捨てアメニティの提供を中止し、必要に応じてリクエストベースで提供する施設も増えています (Ocean Literacy Portal)。
2.リサイクルと廃棄物管理:
ゴミの分別リサイクルを推進する宿泊施設が増えています。多くのホテルが、客室にリサイクル用のゴミ箱を設置し、プラスチックや紙の分別を促しています。さらに、一部の高級ホテルでは、廃棄物を減らすためにデジタルキーや電子レシートの導入も進んでいます。
3.エコアメニティの導入:
一部の宿泊施設は、環境に優しいエコアメニティを導入しています。例えば、シャンプーやボディソープを大型ディスペンサーに切り替え、個別包装の廃止を進めています。これにより、プラスチック廃棄物の削減に貢献しています。
課題
コストの問題:
サステナブルな取り組みは初期投資や運用コストが高くなる場合が多く、小規模な宿泊施設にとっては大きな負担となります。使い捨てプラスチックの代替品はしばしば高価であり、価格競争力を持たせるのが難しいです。
消費者の意識:
サステナビリティに関心のある消費者は増えていますが、全体の割合はまだ少なく、サステナブルな取り組みが直接的な売上増加につながりにくい現状があります。消費者の教育や啓発活動が必要です。
インバウンド増加の影響:
円安により訪日外国人観光客が増加しているため、宿泊施設の需要が高まっています。この増加は宿泊業界にとって好機ですが、同時に廃棄物の増加ももたらします。特に、観光客が多く利用するプラスチック製品の管理が課題となっています。
海外の取り組みと課題
取り組み状況
1.ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)運動:
アメリカやヨーロッパでは、廃棄物を一切出さないことを目指す「ゼロウェイスト」を掲げる宿泊施設が増えています。これらの施設では、リユース可能な食器や容器を使用し、使い捨て品を一切使わない取り組みが進んでいます 。
2.使い捨てプラスチックの規制:
ヨーロッパでは、使い捨てプラスチック製品の使用を法律で禁止する動きが進んでいます。EUは2021年に使い捨てプラスチックのストロー、カトラリー、皿などを禁止する法律を施行しました。これにより、多くの宿泊施設がプラスチックの代替品を探す必要に迫られています。
3.サステナブルパッケージの採用:
一部の宿泊施設は、環境に優しいパッケージを採用しています。オランダのホテルでは、生分解性のパッケージを使用しており、使い終わった後に堆肥として利用できるようにしています。
課題
1.コストとインフラの問題:
廃棄物処理のインフラが整っていない地域では、リサイクルやコンポストの導入が難しいことがあります。特に発展途上国では、廃棄物管理のインフラが整備されていないため、持続可能な取り組みが進みにくいです。サステナブルな代替品のコストが高く、小規模な宿泊施設にとって負担が大きいです。
2.文化的な違い:
サステナビリティに対する意識や価値観は地域ごとに異なり、統一した取り組みが難しいことがあります。例えば、欧米ではサステナビリティが重視されますが、アジアの一部地域ではまだ認識が低い場合があります。
3.規制のばらつき:
各国の規制や基準が異なるため、国際的なチェーンホテルにとっては対応が複雑になることがあります。特に、使い捨てプラスチックの規制が厳しい国とそうでない国の間での運営が難しいです。
まとめ
宿泊施設のサステナビリティへの取り組みは、環境保護と社会貢献の観点から重要です。国内外で多くの努力がなされていますが、コストやインフラ、文化的な違いなどの課題も存在します。円安によるインバウンド増加に対応するためには、さらなる取り組みと協力が必要です。持続可能な未来を実現するために、宿泊施設は引き続きサステナビリティを重視した取り組みを進めていく必要があります。
参考資料:
NCEL's Economic Impacts of Plastic Pollution
IUCN Economic Case Studies on Plastic Pollution
Ocean Literacy on Plastic Pollution
pic:macrovector/Freepik ※Photo is an image.
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