2024.06.27 02:30

「紙100%」表示の真実：光沢紙やコーティング紙

環境に優しい製品への関心が急上昇している現代において、「紙100%」と表示された製品は、多くの消費者にとって特に魅力的に映ります。しかし、見た目が光沢のある「紙100%」製品には、実はプラスチックや樹脂が含まれていることがあり、その結果として非生分解性である可能性が高いのです。この隠れた事実を知り、企業と消費者がどのように対策を講じるべきかを考えてみましょう。

光沢紙の製造方法と問題点

光沢のある紙の製造方法

1.プラスチックコーティング

ポリエチレンコーティング：耐水性や強度を高めるために、紙の表面に薄いポリエチレンフィルムをラミネートする方法です。

ポリプロピレンコーティング：高い透明度と耐久性を提供し、食品包装などに広く使用されています。

2.樹脂コーティング

アクリル樹脂コーティング：光沢と耐久性を高めるために使用され、ポスターや高品質な印刷物に用いられます。

ポリウレタンコーティング：長期使用が必要な製品に適しており、耐久性を向上させます。

非生分解性の問題

プラスチックや樹脂でコーティングされた紙は、完全には生分解性ではありません。これらのコーティング材料は自然環境では分解しにくく、自然界流出するとマイクロプラスチックとして環境に影響を与える可能性があります。

紙コップや紙ストローの内側にコーティングされた加工の健康への影響

紙コップや紙ストローの内側には、耐水性や耐油性を持たせるためにプラスチックや樹脂がコーティングされていることが一般的です。これらのコーティングには、主にポリエチレン（PE）やポリプロピレン（PP）、さらにはポリ乳酸（PLA）などが使用されます。

これらのコーティング材料は、通常の使用においては安全とされていますが、高温の液体に触れると微量の化学物質が溶出する可能性があります。特に、ポリエチレンやポリプロピレンは、熱によって分解し始める温度が比較的低いため、非常に高温の飲み物を紙コップに入れる場合には注意が必要です。

一部の研究では、これらのプラスチックコーティングが分解する際に発生する化学物質が健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。例えば、ポリエチレンからはエチレンや他の有機化合物が微量に溶出することがあります。これらの化合物は、大量に摂取すると健康リスクを引き起こす可能性がありますが、通常の使用量では問題ないとされています。

消費者としては、高温の飲み物を紙コップに入れる際には短時間で飲み切るようにする、またはできるだけ環境に配慮した無害なコーティングが施された製品を選ぶことが推奨されます。企業側も、安全性が確認された材料や新しい技術を用いた製品開発を進め、消費者に対する情報提供を徹底することが求められます。

「紙100%」表示の問題点

誤解を招く表記

「紙100%」と記載されている場合、消費者は全てが生分解性であり、環境に優しいと誤解する可能性があります。実際には、プラスチックや樹脂が含まれている場合、完全に紙100%とは言えません。

規制と許容範囲

法規制や業界基準によって、「紙100%」と表示するための条件は異なる場合があります。一部の国や地域では、紙の構成材料に関する厳しい規制があり、誤解を招く表示は禁止されています。

企業が気をつけること

透明性のある情報提供

製品の構成材料について、透明性のある情報を提供することが重要です。具体的な成分やコーティングについて明示し、消費者に誤解を与えないようにする必要があります。

環境に優しい代替素材の使用

プラスチックや樹脂の代わりに、生分解性のある材料やリサイクル可能な素材を使用することで、環境への負荷を減らす努力が求められます。

環境認証の取得

環境認証を取得することで、製品の環境配慮を証明し、消費者の信頼を得ることができます。

消費者が気をつけること

・ラベルの確認

製品のラベルをよく確認し、具体的な材料やコーティングについての情報を探しましょう。詳細な説明がない場合は、製品のメーカーに問い合わせることも有効です。

・環境認証の確認

FSC（森林管理協議会）認証やPEFC（持続可能な森林認証プログラム）などの環境認証マークがある製品を選ぶことで、環境に配慮した製品を購入することができます。

FSC 100% : FSC 認証を受けた森林からの 100% バージン素材で作られています。

FSC ミックス : FSC バージンファイバーおよび/またはリサイクル材料と管理バージンファイバーの混合物です。左上隅のリサイクルシンボルは、消費者前および消費者後のリサイクルファイバーの量を示します。

FSC リサイクル : 100%リサイクル繊維から作られています。左上隅のリサイクルシンボルは、消費者前および消費者後のリサイクル繊維の量を示しています。

リユース・リサイクルのための表示

使用後に適正に処理していただく際に参考となるものです。

・紙製容器包装：紙製容器包装リサイクル推進協議会

アルミ不使用のものおよび段ボール製容器包装を除く飲料用パックの紙製容器包装に表示されているマーク。

・紙パックマーク：飲料用紙容器リサイクル協議会（全国牛乳容器環境協議会）

アルミなし紙パックに付けられるマーク。資源有効利用促進法において、識別表示が義務化されず、事業者団体において自主的に表示。

・グリーンマーク：公益財団法人古紙再生促進センター

古紙を再生利用した紙製品を消費者の皆様に積極的に使用していただくことによってリサイクルの拡大を図るためのシンボルマーク。

・再生紙使用マーク：ごみ減量化推進国民会議

古紙配合率が容易に判る表示のことで、使用に際しては特に許認可の必要はありませんが、古紙配合率にとどまらず白色度についても併記することが奨励されています。また表紙と本文での古紙配合率の違う紙を使用した場合は、両方表示する。

まとめ

「紙100%」と記載されていても、実際にはプラスチックや樹脂がコーティングされている場合があります。これにより製品は非生分解性となり、人や環境に影響を与える可能性があります。このような表示は誤解を招く可能性があり、消費者は製品の詳細を確認する必要があります。適切な表示と消費者教育が重要であり、持続可能な選択を推進するために、透明性のある情報提供が求められます。企業と消費者が協力して環境に配慮した選択をすることで、より持続可能な未来を築くことができます。

環境省大臣官房環境経済課：環境ラベル等データベース

pic:Freepik ※Photo is an image.