本革と合成皮革の混同防止へ:「革」「レザー」の定義明確化

2024年3月、日本は「革」や「レザー」と呼べる製品を動物由来のものに限定する方針を発表しました。この背景には、植物由来や石油由来の素材を「○○革」「○○レザー」と名付けて商品化することが増え、消費者が本革製品と合成皮革製品を誤認して購入してしまう例が多発している現状があります。

国際的な動向と日本の対応

イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、ブラジル、ポルトガルなどの諸外国では、すでに同様の規定が法律で定められています。これらの国々では、消費者保護の観点から、本革と合成皮革の明確な区別を法律で義務付けることが一般的です。

イタリアでは、2020年10月24日に「革(レザー)」の定義を明確にする新法令が施行されました。この法令により、「革(pelle)」および「レザー(cuoio)」という用語は動物由来の素材に限定され、合成皮革やヴィーガンレザーなど、動物由来でない素材にはこれらの用語の使用が禁止されました。この新法令は、消費者が誤認しないようにするためのものであり、イタリアタンナーズ協会(UNIC)が長年にわたり提唱してきた成果でもあります。

日本においては、ISO(国際標準化機構)規格に則り、法的な強制力はないものの、これら諸外国に倣う形でJIS(日本工業規格)が制定されました。このJISの新基準により、「革」や「レザー」と表示できるのは動物由来の素材に限られ、植物由来や石油由来の素材には「合成皮革」や「ヴィーガンレザー」などの別称を用いることが推奨されます。

一般社団法人日本皮革産業連合会:「革」「レザー」の用語がJISにて制定(PRTIMES)


消費者保護と業界への影響

この新基準は消費者保護の観点から非常に重要です。消費者は「革」や「レザー」という呼称を見た際に、それが動物由来の本革であると自然に想定します。しかし、植物由来や石油由来の素材も「○○革」や「○○レザー」として販売されると、誤認が生じる可能性があります。特に、品質や価格が異なるため、誤って購入すると消費者にとって大きな損失になることがあります。

業界にとっては、この基準変更は製品表示の見直しやマーケティング戦略の修正を迫られることになります。しかし、これにより消費者の信頼が向上し、製品の品質や価値が正しく認識されることで、長期的には業界全体の健全な発展に寄与することが期待されます。


今後の展望

新しい基準の施行により、消費者は製品選択の際により正確な情報を得られるようになります。また、合成皮革やヴィーガンレザーといった代替素材の市場も透明性が高まり、それぞれの素材の特徴やメリットがより明確に伝わることでしょう。

この動きは、環境意識の高まりと相まって、エコフレンドリーな素材の普及を促進する可能性もあります。消費者は自分の価値観に合った製品を選ぶことができ、企業は新しい市場での競争力を強化するチャンスとなります。

今回のJIS制定は、国際標準に準拠しながらも日本独自の消費者保護を強化する重要な一歩です。今後も消費者と企業双方にとって有益な施策が展開されることが期待されます。


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